5月
30(水) 屋上のマツの苗木
今日の仕事はマンションの植栽管理だった。そのマンションには屋上に地被植物が植えてある。ぼくはその現場にひとりで出かけて、除草作業を行なった。
屋上に通じるドアには普段カギがかけられ、入居者は屋上に立ち入ることはできない。だれも来ない場所になぜ草木を植えるのだろう?集合住宅を建てる時はある一定の植栽面積を確保しなければならない、というような条例があるのかもしれない。
草むしりをしているとき、ちいさなマツの苗木を見つけた。なにかの拍子に人工土壌中にマツの種子が紛れ込み、発芽したみたいだ。
ぼくはマツの苗木を取らずにあえて残しておいた。土が少ないのでマツが大きくなることはない。けどそれなりに育つかもしれない。想像するとけっこう楽しい。
14(月) NHKの集金のひと
ゴールデンウィークの最終日の昼過ぎ、部屋のチャイムが鳴った。宅配便の荷物が届く予定はなかった。ましてやぼくのうちに来客があるはずもない。インターホンの画面を見ると若い男が立っていた。NHKの集金だった。
ぼくの部屋にはテレビがない。ひとり暮らしを始めて以来30年、テレビなしの生活にすっかり慣れてしまった。
ぼくは部屋のドアを開け、受信料を徴収しにきた人に「テレビ持ってないんです」と言った。相手は「ふむ、なるほど」みたいな顔をして声を出さずにうなずいた。
NHKの人はいくつか立て続けに質問してきた。
「パソコンでテレビは見ないのか」
「あなたのクルマにナビはついていますか」
「テレビ受信機を持っていますか」
すべての質問にNOと応えた。何も所有していない自身の暮らしぶりに改めて気づかされて気が滅入る。
何年か前にNHKの集金の人が来た時は、玄関に立っているその人に見えるようにして部屋のテレビ端子をスマホで写し、端子に何もささっていない画像を見せた。その人は納得したようだった。今回来た新しい集金人にそういう情報は引き継がれていないのだろうか。
「何かあったらご連絡ください」と言い残してNHKの人は帰っていった。帰り際に受信料契約についての案内を置いていった。渡された時はなんとも思わなかったんだけど、「受信料を払う気になったら電話ください」という意味だったのかと思うと少し腹が立った。けどテレビがあるのに「うちにはテレビないんです」とシラっと言い逃れる人を今まで散々見て来たのだろう。集金人が疑り深くなるのも無理はない。