6月

トーメイ高速のイメージ
トーメイ高速のイメージ

 

 

 

26(日)  透明高速

 

 

 

   ちいさい頃、「東名高速」を「透明高速」と思い込んでいた。透き通ったチューブの中を、クルマが弾丸みたいに走っているのだ、と。その近未来的な光景を想像するだけでぼくの心臓は激しく高鳴った。

   親戚のおじさんなどがうちに遊びに来て、「今日は東名高速を使ってここまで来たんだよ」と言われようものなら俄かにおじさんがまぶしく見えたものだ。「おれも早くトーメイ高速を体験してぇ」お気に入りのメトロン星人の人形を握りしめ、はやる気持ちをおさえた。ぼくが幼稚園のころだ。

 

   「透明」ではなく、「東名高速」だと知ったのはいつごろだろうか?東京と名古屋を結ぶので、一文字ずつとって「東名」なんだねきっと。なんの変哲もないコンクリの道路だと知ってとてもがっかりしたおぼえがある。

 

 

   トーメイ高速.  .  .  声に出して言ってみるとキラキラしてスピーディーなイメージがあると思うんだけとなぁ。今だにしつこくそう思っています。

 

 

 

 

 

 

22(水)   たいてい毎朝失くすもの (だけどすぐに見つかる)。

 

 

 

   朝食はパンとサラダ。袋から食パンを取り出し、トースターへ入れる。袋に封をしようと止め具を探すと、どこかへ消えている。

 

   食パンのビニール袋を閉じるための、プラスチック製のちいさな止め具、ぼくはあれをほとんど毎朝と言っていいくらい失くしてしまう。そんなバカな、と思うでしょ。でもホントなんです。食パンの袋からパンを出して口を閉じるまでほんの数十秒の間のことなのに。

   もっとも失くし物はわりとあっさり見つかる。白い止め具を、同じような色をした郵便物の上にのせたので見つけにくくなっていたり、冷蔵庫の上なんかにとりあえず置いたりしているのだ。寝ぼけでいるから止め具を置いた場所を忘れちゃうのかも知れない。部屋が暗過ぎるのか。

 

   ほかの物はだいじょうぶなのに、食パン袋の口を閉じるヤツ (名前が分からない) だけはちゃんとなくしてしまう。すぐ見つかるとはいえ、我ながら不思議です。

 

 

 

 

 

 

19(日)   美容室、いい匂いのするタオル

 

 

 

   蒸し暑いくもり空の日曜日、髪を切った。

   カットを済ませると洗面台へうながされ髪をすすぐ。軽く頭皮マッサージをしたあとでスタッフがフェースタオルを渡してくれる。

   いい匂いのするタオルで、顔に押しつけていると気持ちがいい。本当はしばらくのあいだ顔にあてていたいのだけれど、うしろにひかえているスタッフに気兼ねをして、ぼくはいつも早めにタオルを返してしまう。

   思い切り顔をごしごし拭いて、いい匂いを嗅ぎまくってからタオルを返せばいいのに、それが出来ないのはたぶんぼくがええかっこしいなんでしょうね。しょうもない自意識過剰がじゃまをしているのだ。

 

   こんな性格ですから、シャンプーのとき「どこかかゆいところはございませんか?」の問いに「あ、右耳の後ろがかゆいです」なんてとても言えないです。

 

 

   シャンプーの時の「どこかかゆいところは?」の問いかけに対し、関西圏ではかゆいところを具体的に言ってくる人が多いそうです。関東圏のひとは「いや、だいじょうぶです」と応える人が多いのだそうです。

 

 

 

 

 

 

 

11(土)   どっちもどっち

 

 


   「あ~今日はおれ、テンション低いッス」現場に向かう軽トラの中、助手席の同僚が言う。「土曜日は現場近くの女子高が休みだから通学して来るJKが見れないんスよ」

   おいおい仕事中に女の子ばっか見てちゃイカンよ、とぼくは年長者として彼のことを軽くたしなめつつ、新聞で読んだ総選挙の結果にため息をついた。1位は前田さんかぁ。ぼくは大島さんが好きなんだけどなぁ。

 

   .  .  .  あ、総選挙って国政ではなく、AKB48のファン投票のことね。

 

 

 

   JKとは女子高生のことです。いちおう念のため。

 

 

 

 

 

 

10(金)   きまぐれサラダ

 

 

 

   ラジオの番組で、紹介していたハナシ。リスナーから送られて来たEメールをアナウンサーが読んでいた。

 

   とあるレストラン、昼下がりのこと。初老の男性がウエイターにクレームを言っていたそうだ。その男性はメニューを指さしながら文句を言っていた。[シェフのきまぐれサラダ]と書いてあるのをみて、客に出す料理を気まぐれに作るとはなにごとか、ちゃんと調理しなさいと怒っているのである。

   きまぐれサラダは、シェフがいい加減にその場の思いつきで作っているわけではなく、旬の野菜を取り入れたりして作るサラダです、たぶん。あんまりくわしくないですけどそういう料理なんだと思う。

 

   きまぐれサラダと言うネーミングに対して腹を立てているこの男性、真面目な人柄がうかがえていいですよね。実直に生きて来たのだきっと。ぼくはラジオを聴いていて、久しぶりに声を出して笑った。